StarBright XLT Optical Coatings
StarBright XLTは、セレストロンが開発した革新的な光学コーティングシステムで、市販の望遠鏡市場におけるあらゆるコーティングを凌駕する性能を誇ります。当社の最も人気のあるシュミットカセグレン式望遠鏡には、この高品質な光学コーティングが標準装備されており、非常に優れた価値を生み出しています。
この記事では、StarBright XLTの設計方法、そして従来のStarBrightコーティングとの比較について詳しく解説します。また、当社の試験方法についてもご紹介します。
セレストロンは、最先端の製造プロセスと妥協のない品質保証体制のもと、高品質な部品を用いて製品を設計・開発することに尽力しています。これは、当社の全製品ラインの設計と品質に反映されており、StarBright XLTも例外ではありません。
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・設計:当社は、光学、半導体、航空宇宙、通信業界で広く使用されている薄膜設計ソフトウェアを用いて、光学コーティングの設計と試験を行っています。このソフトウェアを使用することで、多層強化ミラーコーティングを改良し、ピーク反射率を可視光スペクトルの中心にシフトさせることができました。当社は、全く新しい多層反射防止コーティングを開発し、補正レンズ(補正板)には新たな低吸収・高透過ガラスを採用しました。この比類なき組み合わせは、すべてのStarBright XLTシステムに標準搭載されています。
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高品質な部品とプロセス:当社のコーティングプロセスは、最先端の薄膜真空蒸着技術を採用しています。均一な最高品質の光学コーティングを確保するため、高度な訓練を受けたコーティング技術者がプロセスを厳密に監視・管理しています。コーティング前には、各光学素子を徹底的に洗浄・検査し、コーティングプロセス中の膜の適切な密着性を確保しています。反射防止コーティングに使用される材料は、99.99%以上の最高純度のものを使用しており、アルミニウム(Al)、酸化ハフニウム(HfO2)、二酸化チタン(TiO2)、二酸化ケイ素(SiO2)、フッ化マグネシウム(MgF2)などが含まれます。
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品質保証:当社の品質保証プロセスにより、厳格な光学品質基準を満たさない光学素子は一切出荷されません。各コーティング工程には、試験用プレートが含まれており、分光光度計による分析を行い、許容される最小透過率または反射率が達成されているかが判定されます。
シュミットカセグレン式望遠鏡の光学要素
望遠鏡は、光を集め、接眼レンズ(アイピース)や同様のイメージングデバイスを通して観察するために焦点を合わせる光学要素の集合体です。光学要素には、ミラーとレンズの2種類があります。ミラーは光を反射し、レンズは光を屈折(曲げる)させます。シュミットカセグレン式望遠鏡は、以下の断面図に示すように、ミラーとレンズの両方を使用します。この望遠鏡では、光は補正レンズを通過し、主鏡で反射し、副鏡で反射し、最終的に焦点面で焦点を合わせます。
光学コーティング
望遠鏡の役割は、できるだけ多くの光を集めることです。集められた光の量は、最終的な画像の明るさに影響します。残念ながら、各光学表面や各レンズの内部には光の損失源が存在します。しかし幸いなことに、適切な光学コーティングとレンズ材料を使用することで、これらの原因による光の損失量を最小限に抑えることができます
光学コーティングは、ガラスに「真空蒸着」と呼ばれるプロセスで非常に薄く塗布された素材の層です。コーティングにおける各層の物理的特性と厚さ、そして各層と塗布先のガラスとの関係によって、コーティングの性能を決定づけます。
ミラーの機能は反射によって光を集めることであるため、これらの光学要素には高反射率の金属コーティングが施されています。コーティングされていないミラーは、表面に当たった光の約4%しか反射しませんが、標準的なアルミニウムコーティングを施したミラーは約86~88%、StarBright XLTコーティングを施したミラーは約95%の光を反射します。
レンズを通過する光については、光が反射と吸収の両方によって失われるため、もう少し複雑です。光がコーティングされていないレンズに最初に当たったとき、約4%が反射されてレンズを通過できなくなります。残りの96%の一部はガラスを通過する途中で吸収され、さらに2番目のレンズでまた4%が反射されます。不要な反射を最小限に抑えるため、高屈折率と低屈折率の誘電体材料が交互に配置されます。望遠鏡レンズに適した反射防止(A/R)コーティングは、可視光スペクトル全体にわたって非常に低く、非常に「均一」な反射率を実現するものです。
A/Rコーティングは反射による光損失を劇的に低減できますが、ガラス内部での吸収による光損失を低減できる光学コーティングはありません。この光損失を低減するには、できるだけ光の吸収が少ないガラスを選択することが重要です。
多くの反射防止(A/R)コーティングの場合では、コーティング面の反射率を測定し、ガラスによる光吸収量を無視するのが一般的です。しかし、望遠鏡レンズの場合、ガラス内部での吸収による光損失量も示さずに、反射防止コーティングが反射をどれだけ抑制するかを示すだけでは、誤解を招く可能性があります。この場合では、両方の光損失量を考慮した実際の透過率を直接測定する必要があります。これらの測定をどのように調整したかについては、「測定結果」セクションで詳しく説明しています。
望遠鏡システムの透過率
システム透過率は、望遠鏡に入る光量に対する焦点面に到達する光量の割合です。これは、補正レンズの透過率、主鏡の反射率、副鏡の反射率の積によって計算されます。
例:補正レンズが光の92%を透過し、主鏡と副鏡がそれぞれ光の89%を反射する場合、システム全体の透過率は0.92×0.89×0.89=0.73、つまり73%となります。
StarBright XLT光学システムの設計
シュミットカセグレン式望遠鏡の光学システム性能を評価する上で最も重要な要素の一つは、透過率、つまり入ってくる光が焦点面に到達する光の割合です。StarBright XLTシステムの設計は、眼視観測とCCD/画像撮影の両方に最適化されたコーティングシステムを開発するという重要な目標を達成しています。
StarBright XLT高透過率光学システム設計を構成する3つの要素は以下の通りです。
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・独自の強化多層ミラーコーティング:アルミニウム、SiO2(石英)、TiO2(二酸化チタン)、SiO2(二酸化ケイ素)の精密な層からなる独自の強化多層ミラーコーティング。反射率はスペクトル全体にわたってほぼ均一であり、画像撮影と眼視観測の両方に最適化されています。
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多層反射防止コーティング:MgF2(フッ化マグネシウム)とHfO2(二酸化ハフニウム)の精密な層からなる多層反射防止コーティング。ハフニウムは、1キログラムあたり約1,500ドルという高価格の希少元素であり、競合するコーティングに使用されているチタンよりも広い透過帯域を実現します。
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高透過率のウォーターホワイトガラス:補正レンズには、ソーダ石灰ガラスの代わりに高透過率のウォーターホワイトガラスを使用しています。ウォーターホワイトガラスは、反射防止コーティングなしで約90.5%の透過率を示し、これはコーティングなしのソーダ石灰ガラスよりも3.5%高い透過率です。ウォーターホワイトガラスをStarBright XLTの反射防止コーティングと併用すると、平均透過率は97.4%に達し、8%向上します(※)。
StarBright XLTコーティングのこれら3つの構成要素により、最高レベルのコーティングが実現しました。システムのピーク透過率は520nmで89%です。システム全体の透過率は、400nmから750nmまでのスペクトルで平均83.5%です。下のグラフは、スペクトル全体におけるシステム全体の透過率を示しています。
このグラフは、副鏡と主鏡の反射率を測定し、コーティングされた補正レンズを透過する光量を測定して得られたものです。これらの値をそれぞれ掛け合わせることで、システム全体の透過率が算出されます。システム全体の透過率は88.9%でピークに達し、400~750nmのスペクトル範囲における平均透過率は83.5%です。
StarBright XLTと従来のStarBrightコーティングの比較
StarBright XLTのシステム透過率は、従来のStarBrightコーティングと比較して16%向上しています。従来のStarBrightコーティングの平均システム透過率は72%ですが、StarBright XLTの平均システム透過率は83.5%です。StarBrightはソーダ石灰ガラス補正レンズを使用していますが、StarBright XLTはウォーターホワイトガラスを使用しており、補正レンズの透過率が大幅に向上しています。
StarBright XLTはStarBrightに比べて16%向上しており(※)、ピーク透過率はそれぞれ89%と80%です。
StarBrightミラー反射率比較
StarBright XLTミラーのピーク反射率は95%で、スペクトル全体における平均反射率は93%です。従来のStarBrightはピーク反射率が94%で、全スペクトルにおける平均反射率は91%でした。
StarBright補正板透過率の比較
StarBright XLTの補正板透過率は97.4%であるのに対し、450~750 nmのスペクトル全体にわたってStarBrightは87%、UHTCは91%です。
StarBright XLTはStarBrightの透過率を12%向上(※)を達成しています。StarBright XLTのピーク透過率は99%、StarBrightのピーク透過率は91%です。
※パーセントの差は、比較データのパーセンテージを基準データで割って算出しています。
例:現行StarBrightの平均システム透過率は72%、StarBright XLTの平均システム透過率は83.5%です。83.5%÷72%=1.16、つまり16%の向上となります。測定結果は小数点以下を四捨五入して整数で表示しています。
試験方法
望遠鏡の光の透過総量は、2つの異なる方法で測定できます。1つは組み立てられた光学システムの測定、もう1つは光路内の各ミラー(反射要素)の反射率と各屈折要素の透過率の測定です。シュミットカセグレン式望遠鏡の場合、主鏡と副鏡の2つの反射要素と、シュミット補正版という1つの屈折要素があります。以下の図を参照してください。
組み立てられた望遠鏡と個々の光学要素の分析
組み立てられた望遠鏡の透過率を測定するには、望遠鏡に光線を通し、同じ強さの光線が空気中のみを通過する場合と比較します。望遠鏡の透過総量は、望遠鏡を通して測定した光の強さを、空気中を通して測定した光の強さで割った比率です。これは口で言うのは簡単ですが、正確に実行するのは非常に困難です。基準となる光線の強さが一定であること、そしてその光が結果に偏りをもたらさない方法で収集されることを確認するために、細心の注意を払う必要があります。検出器入口でのビーム形状(f値)による誤差や、内部遮光板の配置や寸法を含む光学要素のわずかなアライメントのズレによって生じる誤差は、望遠鏡を通して測定される光の強さを低下させる傾向があります。
望遠鏡の透過総量を測定する2つ目の方法である、光路内の各要素の分光光度分析は、これらの誤差要因の影響を受けません。さらに、組み立てられた鏡筒の透過率測定では得られない、各光学要素に関する具体的な情報を個々の要素の分析から得ることができます。この方法で得られた結果は、組み立てられた望遠鏡の実際の最高水準の透過率を表しています。
望遠鏡全体の透過率(%TT)は、補正板透過率(%TC)×主鏡反射率(%RP)×副鏡反射率(%RS)以下です。
補正板透過率(%TC)
補正板透過率の測定には、島津製作所製UV1601分光光度計を使用しています。この分光光度計は、190~1100nmの波長範囲を持つ二光束式です。透過率データは通常、可視光領域(400~750nm)で取得されます。補正板のコーティング工程ごとに、ウィットネスプレート(テストプレート)と呼ばれる補正材の小片サンプルが用いられます。フルサイズの補正板の取り扱いを最小限に抑え、傷が付く可能性を減らすため、これらのウィットネスプレートを用いて補正板の透過特性を評価しています。
当社の装置は、直径8インチまでの補正板の透過率を測定できます。必要に応じて、補正板を約90°間隔で4箇所で測定され、その結果が平均化されます。各測定の前後ににベースライン(100%)測定を行い、光源および/または検出器の変動が無視できるレベルであることを確認します。
主鏡および副鏡の反射率(%RP、%RS)
主鏡および副鏡の反射率を測定する推奨方法は、テストプレートを使用することです。テストプレートは、主鏡および副鏡とともにコーティングされた、直径1~2インチの小型の平面研磨ガラス基板です。コーティングプロセスが同じで、表面も同様に研磨されているため、テストプレートの反射率は主鏡および副鏡の反射率と同じです。平面のテストプレートを使用する理由は、1) 傷の原因となる可能性のある測定プロセスに主鏡および副鏡そのものをさらさないため、2) 平面の 反射率を測定するために、非常に簡単な試験方法と容易に入手可能な基準器を使用できること、です。
通常、表面の反射率は、反射率が参照基準と比較して測定されます。当社の標準参照面は、NIST(米国国立標準技術研究所)の鏡面反射率標準に基づいて校正された、強化アルミニウムコーティングされた石英の平面プレートです。平面サンプルの反射率を測定するには、標準値を用いて測定された基準と、サンプルの反射率を比較します。
サンプルの反射率(%RS)は、標準値に対するサンプルの反射率(%RSR)に、参照基準の反射率(%RR)を掛けた値に等しくなります。
ただし、測定するサンプルが副鏡や主鏡のように曲面を持つ場合、かつテストピースが利用できない場合は、反射率の測定方法が曲率の影響を受けないように特別な注意を払う必要があります。曲面の反射率を平面基準の反射率と直接比較すると、結果は正確ではありません。なぜなら、曲面によって発生する収束または発散する光線は、平面サンプルによって照射される光量よりも、検出器に照射される光量が少なくなる(副鏡の場合)か、多くなる(主鏡の場合)からです。
曲面の反射率を測定するために最も広く用いられている装置は、「積分球」と呼ばれるものです。この装置は、光線の形状に影響されない方法で光を集光し、光の強さを測定します。したがって、測定対象の反射性サンプルの表面曲率にも影響を受けません。しかしながら、積分球は非常に高価であり、設置と校正にも時間がかかります。そこで私たちは、表面曲率の影響を受けにくいものの、はるかに低コストで短時間で測定できる方法を開発しました。試験対象と同じ表面曲率を持つ副鏡と主鏡を用いて、独自の基準鏡を作成しました。
試験対象の副鏡と主鏡のサンプルを入手し、既存のコーティングを除去して、平面のテストプレートも用意した新しいコーティングを施しました。これらの平面テストプレートは、NISTの鏡面反射率標準を用いて校正しました。平面テストプレートは曲面サンプルと同時にコーティングされており、また、コーティングの均一性が各サンプル間で非常に高いことを示す十分なデータがあるため、この反射率データを曲面サンプルに適用できます。これらの曲面反射率標準を用いることで、平面反射率標準を用いて平面サンプルの反射率を測定するのと同様に、同じ曲率を持つ他のミラーの反射率を測定することができます。
これらの測定には、Ocean Optics社製USB2000分光器とLS-1タングステンハロゲン光源を使用します。これは、分解能0.3 nm、スキャン範囲340 nm~1024 nmのシングルビーム計測器で、光ファイバー式曲面反射率測定プローブを備えています。
データの報告
データを収集し、それらを整理して望遠鏡全体の透過総量(%TT)(システム透過率)を算出することは、単純な掛け算です。各波長におけるそれぞれのデータセット(%TC、%RP、および%RS)の平均値を求め、それらを掛け合わせることで算出しています。
